❝なでる❞を見直してみる

犬との向き合い方

犬をトレーニングするときに『褒める(正の強化)』が必要なのはこれまでも述べてきました。

その褒める手段として、

パピーウォーキングの中ではトリーツを使う方法を中心にお伝えしてきました。

しかし今一度、❝なでる❞ことの効果について見直すようになっております。

トリーツを使う方法の利点

褒める上で、トリーツを使う効果は研究でも実証済みで、

「犬はどの褒められ方をより好むのか?」という研究の中でも、

最も効果が高い順に、

①食べ物 ②ジェスチャー ③言葉 という順番になりました。

実際に、15年くらい前から盲導犬の訓練にもクリッカートレーニングを取り入れるようになり、

クリッカーとトリーツによる強化を利用するようになって訓練の正確性は劇的に高まりました。

例えば、以前は交差点で止まる位置や椅子やドアなどに誘導する際など、

「何となくこの辺り」だった誘導も、より正確な位置まで求めることができるようになりました。

さらに、トリーツを使うことは、不安感の解消などにも高い効果を発揮します。

例えば、車酔いなどは、以前だと「慣れさせましょう…」としかお伝え出来なかったものが、

今ではトリーツを使いながらの拮抗条件付けと系統的脱感作により、

より早く、確実に解消していけるようになりました。

トリーツを使う方法の難しさ

一方で、トリーツを使う方法の難しさも感じています。

トリーツを使うタイミングがずれると、違ったことを教えている可能性もあります。

また、徐々にトリーツの使用頻度をランダムにしていくことが効果的ですが、

どうしてもトリーツ頼りになってしまい、「トリーツがないと動かない…」に陥りやすくなります。

そして、トリーツを使ったからといって作業意欲を高めるわけではありません。

実際に、

「盲導犬作業に対して意欲的になるのでは!」「意欲が増すことで合格率が上がるのでは!」

と期待してクリッカートレーニングを取り入れましたが、

作業の質を高めることはできましたが、盲導犬の作業に対しての意欲を高めるわけではなく、

合格率の向上にはつながっていません。

子育てでも犬育てでも、ごほうびなどの刺激によって意欲をあげることには限界があり、

❝意欲❞や❝やる気❞は、やはり内発的動機の影響が大きいようです。

なでる効果

トリーツの使用の限界も感じている中で、最近は撫でることの効果を見直すようになっています。

❝なでる❞は、安心や落ち着きを作るのにとても効果的!

実際に犬同士で行われるグルーミングや体を触れ合う行動は、

安心感や落ち着きを作る作用があることがわかっています。

そしてこのグルーミング効果は、犬同士に限らず多くの動物に見られるもので、

サルの『ノミ取り動作』も、実はノミをとっているわけではなく、

グルーミング効果のために行っているともいわれています。

なでることで落ち着きや安心をベースにした信頼関係を作ることで、

不安の解消はもちろんのこと、内発的な意欲の向上にも効果を発揮するのではないかと期待します。

まとめ

誤解しないでほしいのは、トリーツを使う方法を否定しているわけではありません。

人はついつい「万能な方法がないか」ということに気持ちがなびいてしまいがちなのですが、

そんなものは存在せず、トリーツを使う方法も万能で完璧な方法ではないということです。

犬もいろいろで、お伝えする人もいろいろ。

犬やパピーウォーカーさんにとってどんな方法を使えばいいのか、

これからも自分の引き出しをたくさん作っていきたいと思います。

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