誰もが「なぜやめられないんだろう」という悩みを抱えているものです(私はクリームパンの爆食)。
今回は、誰もが陥りがちな「ハマり」について、人間の脳の仕組みをもとに解説します。
「条件反射」を発見したロシアの生理学者であるパブロフは、人間の脳には第一信号系と第二信号系の脳があると提唱しました。
無意識を司る脳(第一信号系/動物脳/衝動的)
人間の脳には、無意識な行動を司る「第一信号系」の脳が存在します。
第一信号系とは、いちいち考えなくても「刺激に対して無意識に体が反応する仕組み」のこと。
我々は、満足したことや快感だったこと、危険を避けられたことなどは、脳で非常に強力な報酬を感じます(生理的報酬)。
そして、強力な報酬を感じた行動は、どんどんと繰り返されるようになり、第一信号系の脳が司る条件反射の行動となっていきます。
私のクリームパン中毒も、甘いものを欲していた時にクリームパンを食べたことで、私の脳が生理的報酬を得ることになります。
クリームパンが生理的報酬として結びついたことで、クリームパンを繰り返し食べるようになり、そのうちにクリームパンを見ると無意識のうちに味を想像するようになっていました。
他にも日常の中に多くの条件反射が見られます。
例えば、SNSの通知はいかがでしょう?
スマートフォンの通知音が鳴ると、仕事中でも会話中でも内容を確認せずにはいられなくなる人も多いのではないでしょうか。
これは「通知音 → 新しい情報得る」という報酬を得ることで、通知音に対しての期待感が強くなり、ついつい反応してしまうという行動が形成されている状態です。
人間の脳の特異な発達(第二信号系/人間的な脳/理性的)
人間の脳は、地球上の他の動物とは一線を画す特異な発達を遂げてきました。
特に、大脳新皮質、中でも前頭前野の著しい発達は、私たちを「人間たらしめる」重要な要素です。
この大脳新皮質は、論理的思考、抽象的思考、言語能力、自己認識といった高度な認知機能を司っています。さらに、前頭前野は、計画性、意思決定、衝動制御、社会性、創造性といった、人間が複雑な社会を築き、未来を計画し、自己と他者を理解するために不可欠な「賢く生きるための」機能を担っています。
この発達のおかげで、私たちは他の動物にはない豊かな文明と文化を築き上げてきました。
「ハマり」のメカニズム
私たちは、発達した前頭前野を持つことで、「第二信号系」と呼ばれる理性的な脳を持っており、「このままでは健康に悪いから甘いものをやめよう」「仕事に集中したいからスマホを見るのをやめよう」と、論理的に考えて衝動を抑制しようとします。
しかし、第一信号系に深く刻まれた条件反射は非常に強力で、意識的な理性(第二信号系)が「やめよう」と働きかけても、無意識の衝動に抗えなくなってしまうことがあります。
これが、いわゆる「やめたいのにやめられない」という「ハマり」のメカニズムです。
犬の脳と「ハマり」のメカニズム
さて、ここで犬の脳に目を向けてみましょう。
犬は、私たち人間と比較すると、第一信号系の影響が非常に大きい動物です。
もちろん、犬にも学習能力はありますが、人間のように高度な論理的思考や長期的な計画性を持つ前頭前野の発達は限定的です。
犬の知能は「人間の3歳と同じくらい」と言われるのはこのためで、犬の行動は快感や不快感といった直接的な経験に基づいた条件反射に強く支配される傾向があります。
例えば、吠えることで飼い主の注意を引くことに成功した犬は、この「成功体験」が繰り返すようになり、吠え癖が「ハマり」のように定着していきます。
また、散歩中に引っ張ったら思い通りに進むことができたという成功が報酬となり、引っ張ることを繰り返して引っ張り癖となっていくのも同じです。
人間であれば、理性で「これは良くない行動だ」と判断し、自力で行動を修正しようと試みることができます(もちろん、それも簡単ではありませんが)。
しかし、犬は自身の行動と結果の因果関係を長期的に捉えたり、自力で衝動を抑制したりすることが苦手で犬は人間のように自力で「ハマり」から抜け出すことは非常に困難です。
したがって、犬が一度問題行動という「ハマり」に陥ってしまった場合、飼い主による積極的なサポートが不可欠となります。
私たち人間が、自らの「第二信号系」を使って「ハマり」から抜け出す努力をするように、犬の「ハマり」を解消するためには、私たち飼い主が彼らの「第一信号系」の特性を理解し、適切な働きかけを行うことが成功への鍵となっていきます。
次回は「ハマり」から抜け出す方法として、『条件反射制御法』について具体的に説明します。
今回はここまで!
お読みいただきありがとうございました。
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