「褒めて教える」という言葉で思考停止しない!

コミュニケーション

最近は子育てでも、犬育てでも、

❝褒めて教えることが大切!❞という主張が本当に多くなったように感じます。

中間管理職は○○ハラスメントに怯えて傾聴地蔵にならざるを得ないし、

盲導犬のトレーナーと訓練の話をしても、

『ノーは使いません』『褒めて教えています』『犬に選択させています』と

みんな判を押したように言う…。

確かに、叱ることのマイナス面は大きいので、

私も子育ての場面では一切叱らないように意識しています。

だからと言って、子育ては褒めることだけで成立するものではありません。

世の中の『厳しくっしちゃダメ』な雰囲気に強制力が働いている感がある中で、

『ちょっと待って!少し冷静になろう。』というのが今回の話。

障害物回避はどのように学習している?

犬が本当に褒められることで学習しているのかどうか、

盲導犬の作業の一つ、❝障害物回避❞を例にとってみてみましょう。

確かに訓練では、褒めて教えていく方法をとっています。

クリッカーを使って、障害物を見たこと(意識したこと)をクリックしてトリーツを与え、

障害物を見ることを意識できたら、次に障害物をよける動作も教えていきます。

しかし、何が障害物になるのかは、暮らしている地域や一緒に歩く目的地、

季節によっても変わるため、訓練中に教えられる障害物の種類は限界が…

したがって、障害物回避というのは盲導犬になった後で、

ユーザーと歩く経験の中で確実性が増していくものです。

では、どうやって確実性が高まっていくのかを考えてみると、

ほとんどが❝失敗から学習している❞と言えるでしょう。

目が不自由な盲導犬ユーザーは、

犬が障害物を意識したことはわからないし、よけたのかどうかわからない場面がほとんど。

つまり、一つ一つの動作を訓練士のように褒めて強化できるわけではありません。

むしろ、ユーザーと歩いているときに障害物にぶつかってしまう経験をして、

その時の衝撃やユーザーの緊張感などを犬が感じて、

次に歩くときには気を付けるようになっていき、

徐々に障害物にぶつからなくなっていきます。

これは失敗によるマイナスを避けるという負の強化による学習です。

可愛い子には旅をさせよ

人が一番学べるのは失敗したときと言います。

確かに、これまでの私自身の人生で、記憶に残っていることと言ったら、

失敗したことばかり!

❝可愛い子には旅をさせよ❞という格言がある通り、

子育てにおいては如何に失敗させるかがとても大切。

経験させて失敗して、失敗から学ぶという強さが大切です。

これは犬も同じではないでしょうか。

ユーザーのもとで障害物回避を失敗しながら学んでいくのであれば、

訓練士が教える段階でも、褒めて教えるだけではなく、

負の強化による学習パターンも経験しておく必要があろうと考えるのです。

相手がどう感じているのか?

自分では良かれと思っていても相手がどう感じているのかを考えていくことが大切です。

例えば、私は自分が褒められて・認められた方が力を発揮するタイプなので、

パピーウォーカーに育児指導をする時も、間違えを指摘するよりは、

いいところを褒めて伝えることが多くなります。

でも、いいところを褒めて伝えるだけでは、曖昧で不安を感じる人もいますよね。

人によっては、褒めるだけではなく、『ちゃんと間違っていることやリスクを指摘してほしい』と言われることがあります。

長男(10歳)と次男(5歳)をみていても受け取り方や求めていることが全然違います。

この前、1年生になったばかりの次男を学校の途中まで見送ることを提案すると、

「ついてこなくていい!」と見事に断られました(えええっ?)。

長男は見送りを喜んでくれていたので、ついつい次男も同じと思ったら、次男は「一人で学校に行けるから見送りはやめてくれ」ということでした…(さびしい)。

長男は失敗しすぎないように成功体験を積み上げる方が良いいし、次男は失敗から学んでいくタイプだなと考えながら子育て奮闘中です。

犬がどう感じているのか?

もう一度犬の話に戻していきましょう。

褒めて教えているということなら、理論的には行動が増えるはずです。

しかし、クリッカーで褒めながら教えていても、盲導犬の作業意欲が低くキャリアチェンジになっていく犬がいるのはなぜでしょう?

これは、犬は褒められたとは感じていないことになります。

強化スケジュールは適切か?

作業の内容に飽きていないか?

もしかすると、「私の次男の例のように、良かれと思ってやっていることが、

マイナスになっている場合もあるかもしれません。

そこを冷静に分析しないと、

「褒めているのにちゃんと動かないのは、わがままだから!」

と犬のせいにした評価になってしまいます。

まとめ

前述のように、伝える上で、

プラス面を中心に伝えた方がいい人もいるし、

マイナス面を提示した方がいい人もいます。

プラス面を伝えた方が意欲がわく人もいるし、

マイナス面を伝えた方が行動につながる人もいます。

そしてこれは犬にとっても同じで、

一つの伝え方だけでどの犬にも伝わるということはありません。

それなのに、❝褒めて教えているからいい❞と思考停止して、

犬がどうとらえているのかを考えなくなるのは、

プロフェッショナルとは言えないなと感じるのです。

相手に合わせてどう伝えるのが一番いいのかを常に考え続ける

伝えるって難しいからこそ楽しい!

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