『ダメ!』を教える必要はある?ない?

犬との向き合い方

相手に伝えたことは、ちゃんと伝わってほしい、

覚えていてほしいと思うのは誰もが望むこと。

今回は、

どうやって伝えると相手に効果的に伝わるのかについての話です。

犬でも人でもどちらにも通じる内容で、必見です!

問題!

人の接し方で犬の学習効果が変わるのかについてハンガリーの大学で実験が行われました。

まずは問題です!(最近問題出しがち…)

実験の結果、犬の学習効果が一番高い接し方は次のうちどれだったでしょうか?

①統制的な接し方をした場合(統制的な接し方のみ繰り返した場合)

②寛容的な接し方をした場合(寛容的な接し方のみ繰り返した場合)

③統制的な接し方の後に慣用的な接し方をした場合

④慣用的な接し方の後に統制的な接し方をした場合

※統制的な接し方とは:
正しい行動ができた場合、トリーツを与えるが言葉や行動では褒めない。
気持ちが散漫している時は、毅然とした態度で『ダメ』『ノー』などを伝えた後に、もう一度コマンドを指示する。

※寛容的な接し方とは:
正しい行動ができた場合、犬にトリーツを与えると同時に、犬が好むように言葉でほめたり、撫でたりする。
気持ちが散漫していたり、動作を間違えても、特に『ダメ!』とは伝えずに、犬を優しく呼び戻して再びトレーニングに戻る。

寛容的な接し方 VS 統制的な接し方

結論から言うと、答えは③

学習効果があったのは、1回目に統制的な接し方をした後に2回目に寛容的な接し方をした場合だけでした。

こういった問題を出すと、白黒はっきりした答えが出ることが好まれます。

でも、どちらが良いか悪いかと白黒つけられるものではないと思うんです。

今は❝陽性強化(褒めて教える)❞全盛の時代ですから、寛容的な接し方が好まれる時代です。

しかし、『ダメ!』と伝えれば行動を止めるという関係性は必要です(統制が取れている状態)。

先日ご相談があったパピーの話です。

犬がかまってほしくて興奮して、飼い主の服や手に噛みついてくるそうで、7ヶ月齢になると噛む力も強くなり、何枚も洋服が破られてしまったということ。

もし嚙みついてきたら、無視をしたり、ケージに入れてタイムアウトしたりという方法をとりましたが、興奮による噛みつきは治まるどころか、散歩でハーネスをつける時、散歩をしている途中で、ブラシをかけているときなどなど、色々な場面に広がっていきました。

最近は、「犬が興奮すると人が犬のサークルに入って避難するようにしている」ということで、これじゃあどちらが飼い主なのかわからない状態ですよね…。

唯一、パピーが寝ているときが一番安心できる時間で、「落ち着いているときに体を撫でたりするとまた興奮する…」という恐れから、パピーを褒めたり撫でたりする機会も少なくなっていきました。

これは統制が取れていないために、寛容に接することができなくなっていた例です。

ポジティブ VS ネガティブ

❝統制 VS 寛容❞に似た議論として、ポジティブ VS ネガティブがあります。

これも、❝ポジティブ思考がいい❞と思われがちですが、そうとは言えません。

ダーツを投げる実験では、悲観的な人が無理やりポジティブ思考で考えて投げるよりも、まず悲観的なこと(注意点)を考えてから投げた方が30%成績が良くなったということ。

また、勉強でも、ポジティブ思考の人が自分にポジティブな問いかけをしたときには成績は変わらなかったのですが、マイナスを考えた方が成績が良かったということです。

他にも、目標を達成しようとするとたいていは計画通りにはいきませんよね。

そこで、計画を立てる時もポジティブなことしか想定していない場合よりも、これでもかというくらい最悪も想定した上で計画を立てた方がうまくいく確率が高いのだとか。

例えばダイエットの計画は、『いつまでに○○Kg痩せる!』という目標で順調に体重が減っていくことしか想定していないと、いざ計画通りにいかないと心が折れやすく挫折しやすいのだそう(まさに自分のことだ…)。

これはポジティブすぎると脳が『余裕』と考えてさぼってしまうという効果。

もちろんポジティブは絶対的に大切です。

要は、二つを並べてどちらか一方が勝利という話ではなく、どちらも必要だということです。

まとめ

もちろん、何かを犬に教える上で、うまくいかないことや失敗したことに『ダメ!』というのは逆効果です。

盲導犬の訓練でも、作業をミスしたとしても叱ることは一切ありません。

ただし集中していない時や気持ちがそれたときには、それに寛容を示すのではなく、毅然とした態度で行動を止めていったん気持ちを作り直すことは必要です。

集中できていなければ失敗を誘発する可能性も高くなり、失敗を繰り返すことは犬に教える上で効果的な学習にはなりませんので。

結論、

車を運転できるのは、皆が交通ルールを守るという統制がとれているからこそ。

そもそも、車のアクセルを踏めるのは、ブレーキを踏んだら止まるということがわかっているから、アクセルを出せます。

つまり、

犬との安心安全な生活を築いていくために、

犬に『ダメ』と言えばやめるという関係性を作ることも、

一緒に生活する上でのルールを守るよう求めることも、

とってもとっても大切なことです。

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