人の子育てでも「叱っちゃだめ」という意見もあれば、一方で「親は子供になめられてはいけない!」という意見もあって、いったいどちらが正解??と迷ってしまいますよね。
犬育てでも同じように、❝叱る・叱らない論争❞があり、一体どっちが正解?とわからなくなりますが、『叱りませんが❝ノー❞は使います』が私の答え。
「ん???」となった皆様に、今回は私が使う❝No(ノー)❞のニュアンスや使い方について書いてみたいと思います。
スケアードストレー卜からわかること
スケアードストレートとは1970年代にアメリカで行われた社会実験です。
非行少年が終身刑の囚人のいる監獄で3時間過ごし、囚人から厳しい現実を聞いたり、監獄生活を目の当たりにすることで、恐怖を感じて更生することを目指したもの。
意気揚々と監獄に入っていく少年も、実際の囚人の迫力や監獄生活の厳しさにショックを受けて帰る子が多かったのだとか。
そして、その後のアンケート調査では約80%になんらかの効果があったという目覚ましい結果が出ました。
様々な専門家たちもこのプログラムを絶賛し、アメリカ全土だけではなく、世界中に広がっていきました。
しかし、その結果は間違いであったことが20年ほど経ってからはっきりとします。
アンケート結果を根拠としていたのですが、アンケートに返信したのはほんの一部の少年だけであったこと。
そして、プログラムに参加した非行少年グループと参加しなかったグループをランダム比較すると、監獄体験をした少年たちの方が、再犯率はむしろ28%も高く、恐怖体験により心に深い傷をおってトラウマになった少年もいることがわかりました。
このことからわかるように、恐怖で相手をコントロールしても良い結果を生む可能性は低くなります。
恐怖刺激に対しては、逃走か闘争という行動に繋がりやすく、言うことを聞いているようでも恐怖で思考停止してしまっている場合がほとんど。
また、相手が恐怖に慣れていけば、いうことを聞かせるためにはさらに強い恐怖刺激が必要になります。
たとえ相手をコントロールできたとしても、信頼をベースにした関係にはならないでしょう。
こうして、恐怖で相手を変えようとすることはマイナスの面が強いことははっきりしていますが、今でもいたるところで用いられています。
例えば、交通安全教室などで、スタントマンが事故の現場を再現して啓発する方法。
これも事故の衝撃などを目の当たりにさせて注意喚起するというスケアードストレートの手法を用いたものですが、一体どれくらいの効果があるのかは疑問です。
子供のしつけでも、『いうことを聞かないと鬼から電話が来る』というアプリがあるようで、これも子供の恐怖心を煽って言うことを聞かせようとするものです。
(#このてのアプリの使用は今すぐやめよう!)
「人間と犬とは別じゃない?」と思われるかもしれませんが、恐怖に対しての反応は犬も同じことで、闘争するか逃走するかの確立が高くなります。
どちらが成長につながる?
もう一つアメリカの実験をご紹介します。
シカゴ大学で行われたもので生徒に対して❝間違った部分の回答の解説を受けるグループ❞と、❝正解した回答の解説を受けるグループ❞に別けて再テストを実施したところ、正解の回答の解説を受けたグループの方が10~30%正解率が高くなったという結果となりました。
これと似たような実験は数多くあり、間違いを指摘されるよりも、正しいことを指摘された方が学習効率は良くなることがわかっています。
これは犬にも同じことが言えます。
いやむしろ犬にとっては人以上に大切なことと言えるでしょう。
今を生きている犬は、前後の文脈から考えることが苦手。
人であれば、間違いを指摘されても『じゃあこうすれば正解なんだな』ということを推察できますが、犬には難しいことです。
よくあるのが、留守番中にいたずらしていたのを、帰ってきた飼い主が発見して叱るというもの。
これは犬にとっては全く通じていないことになります。
(#飼い主のとるべき行動は“ぐっと我慢する”の一択です。)
Noのニュアンス
2つの実験結果から、『やっぱり叱るのはダメなんだ』と結論付けたくなりますが、ちょっとお待ち下さい!
私たちが車を安心して運転できるのは、皆が交通ルールを守っているという前提があるからです。
そして、アクセルを踏めるのは、ブレーキが効くからです。
誰も信号を守らなければ安心して運転できませんよね。
そもそもブレーキを踏んでも車が止まらなければ、絶対にアクセルを踏めないはず。
これと同じで、犬に共同生活のルール教えたり、安全を守る上でNOを教えて犬の行動を止める手段を持つことは有効なことです。
ただし、このときに使うNOは、あくまでも「その行動はいったん止めて」というニュアンスで使うもので、不機嫌になったり、感情的になって怒る必要は一切ありません。
また、NOを使うだけでは、何が正しいのかは理解できていませんので、GOODの行動は何か?を教えていくことが大切です。
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