お父さんは怖い存在である必要があるか?
先日、2児のパパでもある同僚が、「やっぱり子供たちにとって、❝お父さん❞は怖い存在である必要があると思うんだよね。」と話していました。
子供に怒った自分を正当化したい気持ちもあり、自分を納得させるような話しぶりでした。
お父さんに限らず、組織のリーダーにおいても、
「部下に対して厳しくする必要がある。」
「厳しくしないと怠ける。」
と考えている方も多いでしょう。
これは、犬の訓練士の世界でも同じような考え方が根強くあり、
私も、『犬に教える時には罰も必要』という考え方に長年染まっていました…。
以下は私の中で、犬を罰するときに自分を正当化してきた理由です。
「犬は群れの中でボスに従うので人がボスになる必要がある。」
「犬をしたがわせるためには、一度犬と勝負する必要がある。」
「母犬は子供がしつこいときはしっかりと怒っている。やっぱり怒ることは必要なんだ。」
「怒られた方が伸びる子もいる。」
「ちゃんと怒っている人の犬の方が、わがままもなくきちんと育っている。」
結論!
結論から言うと、教えるために、伝えるために罰を使う必要はありません。
子供や犬、部下に対して怖い存在を演じる必要はないんです。
怖さで相手をコントロールしようとして、相手を罰することはむしろ逆効果になります。
今回は罰することについて、❝なぜ罰はだめなのか?❞をPart1で。
パート2で私が取り組んでいる ❝罰を使わないで付き合う方法❞ をお伝えします。
読むのにヘビーな文章ですが、ぜひ読み進めてみてください。
転機 「このままじゃあダメだ…」
まず、なぜ罰が必要と考えてきた私が、自分を変える努力をしているのか?についてお話します。
それは、パピー(子犬)育成の担当になったことが転機でした。補助犬のトレーナーとして長年活動してきましたが、7年前からボランティアに預けている子犬の育成指導の担当となりました。
子犬たちは、成犬に比べると予想もつかない行動をします。
そして、子犬を育ててくださるボランティアの皆様も、「犬を飼うのも初めて」という方もいますので、それはそれはさまざまな出来事が起こります。
そういった状況で、これまでのやり方では対応できない場面が増えてきました。
また、同じ時期に自分に子供ができたことも大きな転機となりました。
『怒る必要があるって自分に言い訳していない?』
『理想の自分って何?』
と悶々と考えるようになり、そんな折に出会ったのが ❝ 選択理論心理学 ❞ と ❝ 行動分析学 ❞。
この二つの学びを通して、
罰を与えることのマイナス面や
なぜ罰を使う自分を採用しているのかを知ることで、
『自分を変えよう!』と決心しました。
罰することのマイナス面
まず先に、『罰する』とはどういう言動なのかを定義していきますね。
罰するとは、体罰的な行為のほかに、❝批判する❞、❝責める❞、❝文句を言う❞、❝ガミガミ言う❞、❝脅す❞なども含まれ、不安や恐怖で相手をコントロールしようとする行為と定義します。
ではなぜ、上記のような罰がマイナスなのか。以下の5点で説明します。
マイナス1 伝わりにくい
想像してみてください。車に乗っていて目的地に行きたいのですが、カーナビが間違ったときだけ教えてくれるカーナビだったら、目的地に着くのにどれだけ時間がかかるでしょうか?
間違えを罰っして教えようと思っても、間違った行動は無数に考えられます。一方で正解は一つです。
どちらを提示した方がわかりやすいかは一目瞭然ですよね。
マイナス2 罰を逃れることに意識がいく(自主性が失われる)
誰も怒られたくないので、その罰を逃れることに意識がいくようになります。
つまり、怒る人の時だけちゃんとしたり、嘘をついたりするように…。
罰を使うことで、ずる賢くさせてしまうんですね…。
そして、怒られないように…ということに意識が行くようになることで、目の前のことを改善しようとしなくなっていきます。
「言われたことだけやればいい…」とチャレンジしなくなるんですね。
自分で目の前のことを工夫してより良いものにしようという自主性が失われて、嫌々やるという状態になっていきます。
「勉強が面白くない…」、「勉強が嫌い…」という子供を作り上げるのもこのパターンですね。
マイナス3 罰を与え続けなくてはいけない・強くしないといけない
マイナス1で挙げたように罰は無数にありますので、罰し続けなくてはいけません。
怒る側も❝間違え探し❞に意識がいくようになるので、ますます間違いが気になって怒ってしまうことの繰り返しになりますよね。
そして、怒られることにも ❝慣れ❞ が出てくるので、怒ってもすぐには動かなくなってきます。
すると、怒っていうことをきかせようともっと強い刺激が必要になるの負の連鎖です…
マイナス4 逃げ場がなくなると反発する。攻撃的になる。
子供に対してがみがみと怒れば怒るほど、生意気な態度になる場面はないでしょうか?
犬も同じで、「ノー!」と言うと、逆に反発してくるというケースを目にします。
「反発したり攻撃すれば、相手が怯んだ」と学習すると、どんどんと反発や攻撃性が強くなっていきます。
マイナス5 関係が壊れる
こうして負の連鎖が続いていくと、最終的には関係を壊します。
今まで怒って相手をコントロールしようとすればするほどに、結局関係が壊れて相手が離れていってしまうという状況を何度も目にしてきました。
以上、5つの観点から説明しましたが、
そのほかにも、
罰によって、自分の損得だけを考える自己中心性が強くなることがわかっています。
さらに、罰を受けてきて育つと、その子が大人になって子供ができた時に自分の子に罰を使う可能性が高くなるという罰の連鎖が起きることも分かっています。
こうして罰のマイナス面だけ読んでいると、お腹いっぱいになってしまいますよね(汗)
罰を使う自分をデトックスするためにも、もう少し頑張って読み進めてみてください。
人はなぜ罰を使うのか?
上記の罰のマイナス面は、本を読めばあちこちに出てきます。
みんな頭ではわかっている。
誰も罰を使いたくはない。でも、罰を使う方法をついつい採用してしまうんですよね。
罰のマイナス面だけを見て、「そんな自分はダメだ」と自分を抑え込もうとしてもうまくいかないんです。
罰を採用してしまう自分に対して自分で罰を与えていると、そんな自分から目をそらしたくなっていき、結局変わらない自分を選んでしまいます。
罰を使う自分を評価することなく、『どうして罰を使うのか?』
そのプラス面も含めて、客観的に、冷静に考えてみましょう。
罰を使う自分をデトックスするためにも、❝罰❞というものを易しく扱って丸裸にしてあげましょう。
❝罰を使う自分❞を丸裸にしてあげる
罰を使い続けるのには、その結果がプラスの作用もあるからです。そして、ついつい罰を使ってしまう理由があるはずです。
それは、
①短期的にでも効果があるから
②怒る方法しか知らないから
③怒りたくなる価値観がある
④習慣となっている
怒ればその瞬間は抑えることができて即効性があります。即効性があるものに人は飛びつきますよね。
また、罰を使うのは自分も使われてきたから。親から学んだ方法を用いやすく、罰が連鎖していくんですね。
だからと言って親を責めてもしょうがない。
親もその方法しか知らなかったのかもしれませんので。
また、世の中を見渡しても、罰で人の行動を規制することが当たり前です。
テレビをつけると、事件や事故、違反などで誰かが罰せられるシーンが毎日のように流れていますので、相手に罰を与えることは当たり前と洗脳されていきます。
また、周囲から罰せられたことは、「こうあるべき」として自分の価値観・信念となっていきます。
価値観や信念が強くなればなるほど、違う価値観に対して柔軟に受け入れることができなくなります。
違いを認められずに責めたり批判したりして、相手をコントロールしようとしてしまう人は、幼少期から罰せられ続けてきた人に多いでしょう。
こうして、長年同じことを繰り返していくことで、どんどんと習慣化されていきます。
そして習慣化されると人は、いいか悪いかも考えなくなり、同じことを繰り返すようになります。
私は、選択理論心理学も行動分析学の両面から、『罰することは効果がない』という科学的証明を学ぶことができました。
ただ、頭で勉強してわかっても、一度❝習慣化された自分❞を変えていく作業は本当に大変です。
罰のない世の中を作りたい!
今までさんざん罰してきて、そんな自分に苦しんできた身として、罰のない人と犬の関係、親子関係を築いていける手助けを少しでもしたい!
というのがこのブログを始めたきっかけでもあります。
そもそも罰を使っている感情の奥底には、『相手に良くなってほしい』という、相手を想う一次感情があることがほとんど。
その一次感情を相手にうまく伝える方法が❝罰❞になっているだけなんです。
伝え方が間違っているだけなんですね。
パート2で私が取り組んできた、罰する自分を変えるための取り組みについてお伝えします。
ここまで長い文章を読み進めていただいた皆様なら、絶対できる!
まとめ
『罪を犯す人は罪の奴隷なり』(新約聖書ーヨハネ伝八章三十四節ー)
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