先日、「名前を呼んでも知らんぷりです…」というご相談を受けました。
子供のころには名前を呼んだら嬉しそうに駆け寄ってきていたのに、
成長とともに反応がにぶくなっていくというのは、あるあるのパターンです。
今回はこの❝名前を呼んでも反応してくれない❞について考えてみたいと思います。
思春期だから仕方ない?
確かに犬は成長段階として人の思春期にも似た時期がやってきます。
人は思春期になると、自分の考えを持つようになり自己主張が強くなってきます。
独立心も強くなり、親や周囲に反発する行動も目立ってきます。
一方で、自信が持てずに依存的になったり不安になったり、
傷つきやすくなったりするのもこの時期です。
盲導犬の啓発で学校訪問もよくしますが、
中学校での講演が一番大変で、聞いているのかどうかわからない反応で、
どうやって興味を引き出そうか、いつも悪戦苦闘です(汗)
犬も6ヶ月齢前後くらいから、思春期行動が顕著になってきます。
自己主張が強くなって、よく吠えるようになったり、
散歩に行っても行きたい場所を主張して動かなくなったり…
かと思えば、今まで大丈夫であったものや人に急に怖がるようになるなど、
警戒心が強くなり、❝チャイムが鳴ったら吠える❞という行動が出てくるのもこの時期です。
このように、「思春期だから仕方がない…」と考えてしまうのもわかるのですが、
犬の行動は学習の結果という行動学の観点から考えると、
『呼ばれても反応しなくていいや』と学習している可能性も見ていく必要があります。
犬は『反応しなくてもいい』と学んでいる!?
さて日頃どんな場面で名前を呼んでいるでしょうか?
以下の例と同じような場面で名前を呼んでいるなと思ったらチェックしてみてください。
□いたずらしていたので名前を呼んで注意した。
□散歩中に匂いを嗅いで立ち止まっているので名前を呼んで中断させた。
□人に興奮して飛びつこうとするので名前を呼んで自制をうながした。
□ドックランで他の犬と興奮しているので呼んで落ち着かせた。
□待たせるときに『○○ちゃん待っててね』
さていかがでしょうか?
結論から言うと、以上の5つのシーンにチェックが多くついた人ほど、
『名前を呼ばれたら反応しなくていいや』と学習させている可能性が大です!
学習という観点から考えると、
行動したことと良い刺激が結びつけば、その行動は強化されて増えていきます。
ということは逆に、名前を呼んでも反応が鈍っているということは、
名前を呼ばれることとマイナスの刺激が結びついていないかを考える必要があります。
上記に挙げた5つの例は、
名前を呼ばれることが、❝やりたいことの中断❞や❝注意される・叱られる❞という刺激と結びついていることがわかります。
これでは当然に、名前を呼ばれることがどんどんと嫌になっていくでしょう。
毎朝子供が起きてこないことにイライラして、
「○○くん、早く起きなさい!」と子供を起こしている親は多いのではないでしょうか?
しかしこれも、名前を呼ぶことで❝眠り❞という快を中断させることになりますので、
毎日繰り返すほどにどんどん反応しなくなっていきます。
どんなにうるさい目覚ましも効果がないのはこの原理です…
どういう時に名前を呼ぶのがいい?
思春期による反応の低下は仕方がないにしても、
反応しなくなることを日々の付き合い方で学習させているなら、
名前を呼ぶタイミングを変えれば改善できそうです!
では、どういう時に名前を呼ぶかというと、
いいことと結びつくように名前を呼んでいきます。
具体的には、意識を向けたくて名前を呼ぶのではなく、
意識が自分に向いているときに名前を呼んで褒めるようにしています。
人はついつい欠けた部分に目が行きますので、
意識が離れた時に名前を呼びがち。
でも、よく見ていると人に意識を向けている場面はたくさんあるんです。
そこを見逃さずに名前を呼んで強化していくことで反応を維持していくことができます!
相手の好意や反応を引き出すには、
自分が好意を持つこと(よく犬を見ること)。
結局は、原因は常に自分にあり!に行きつきます。
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