人は、ついついマイナスの部分や欠けているところが気になってしまうもの。
ですから、自分や相手のいいところよりも、気になるところの方がすぐに思い浮かぶし、
実際にその部分を注意してしまいがち。
失敗などに対して、「どうしてできなかったのか?」「だれの責任か?」などといった、
原因追及に走ってしまいます。
犬に対してもどうしてもこの意識が強くなりがちで、
問題行動に反応して、その行動の原因を探り、行動を抑えたり変えようとしてしまいがち。
私は❝望ましい行動に目を向ける!❞という視点で犬と向き合うことを大切にしており、今回はこの視点について具体的な例でお伝えします。
警戒吠えの例
14歳になる犬の来客者に対する警戒吠えについてご相談を受けました。
警戒吠えは若いときからあったようで、
訓練所に出して、吠えを抑える訓練を受けたけど変わらず、
年齢を重ねるごとに程度は強くなっているとのことでした。
飼い主の方は、『悪い子じゃないんです。この吠えだけなんです…』と申し訳なさそう。
吠えの状況をよく観察していると、
見知らぬ人が家に入ってくると吠えます(慣れた人は吠えないということ)。
そして、警戒対象の人が少しでも動くと反応して吠えます。
動かずに座っていると犬も吠えやみます。
耳が遠くなっているため、物音に対して反応はありませんが、
動くことに対しては敏感になっているようでした。
これまでは、吠える度に名前を呼んで注意をしたり、
おもちゃを与えて犬の気をそらしたりしていました。
それでも、私が動くと不安になるのか私の周りを歩きながら吠えています。
私が犬の体に触れると離れていきますし、
トリーツを与えようとすると顔をそらして食べようとはしません。
解決方法~二つのアドバイス~
そこで、二つのことをアドバイスして実践していきました。
①『犬が吠えずに寝ている状態を認めてあげましょう』
犬は常に警戒をしているわけではありません。
私が動いていないときには伏せて寝ているときもあります。
その状態の時に飼い主がゆっくりとなでてあげるようにしました。
吠えるというマイナスの部分を抑えるのではなく、
良い状態に注目して、その状態を認めていくという方法です。
②『犬の警戒心を抑えるのではなく尊重してあげましょう』
具体的には、吠える前に示している軽度の警戒サインに対して(起きる、注視するなど)、
❝ 人の方が動きを止める ❞、❝ 動きをゆっくりにする ❞などして、
警戒の気持ちを尊重していくようにしました。
結果
二つのことを実践していくと、
軽度の警戒サインでも人が反応してくれるので、
安心する気持ちが強くなって伏せて寝る時間が長くなっていきました。
そして、寝ている時間をなでて尊重してあげることで、
さらに伏せて落ち着く時間が増えていきました。
私が動くたびに起きて立ち上がって吠えていたのですが、
吠えても伏せたままであったり、すぐに止まるようになりました。
吠えの強さも「ワン!ワン!ワン!」ではなく、
「ボフ、ボフ」と明らかに軽度になっていきました。
まとめ
今までは、お客さんに申し訳ないと犬を注意して、行動を抑えようとしてきたのですが、
全く違う視点からのアドバイスに、
飼い主の方は、『心が軽くなりました。私が救われた気持ちです。』とおっしゃっていました。
整理すると、今回のアドバイスは、
『問題行動に注目してそれを抑えるのではなく、良い状態に注目していき、良い状態が出やすいように環境を整えていきましょう』というものです。
この姿勢は、子育てや組織運営など、あらゆる場面に応用が可能で、
すべてをHappyにする考え方だと信じています!
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