犬を抱っこをするとわがままになる!?
犬育てに携わっていると、
「子犬のころから抱っこをしているとわがままになるのではと心配…大丈夫でしょうか?」
という質問をよくいただきます。
「抱っこをすると抱き癖が付いてわがままになる…」とか、
「人の顔の高さに犬を持ってくると、犬がボスと勘違いするようになる」
なんていう説もあるようですが、
結論から言うと、全く問題ありません!
特に中・大型犬の場合は重たくなってくるので、抱っこができるのはせめて5ヶ月齢位まで。
ほんの数か月ですから、「今のうちにたくさん抱っこしてあげてください」と伝えています。
甘えの経験=自信や自立の確立
こういった心配をするのは、
「ちゃんと自立した大人に育ってほしい」という相手を想う気持ちから、
「自立のためには"甘え”は受け付けない方が良い」と考えられるのでしょう。
しかし、発達のためには"甘えさせてもらえた”という経験は必要なこと。
信頼できる人に自分の気持ちをさらして、受け止めてもらえたという安心感が自己肯定感という土台を作り、将来自立できるようになっていきます(『モンテッソーリ教育が教えてくれた「信じる」子育て』より)。
「ご飯を食べた後や寝る前に、必ず座っている私の足の中に入ってきて撫でてほしいと甘えるんです。付き合ってもいいのでしょうか?」
これも甘えの行動ですが、
ご飯を食べて満たされて、
愛するご主人に抱かれて眠る
犬にとってはお腹も心も満たされる最高の至福タイムですし、満たしてあげるといいでしょう!
毒になる"甘やかし”
では、何でも犬の思い通りにすればいいのか?というとそうではありません。
甘やかしは、わがままな犬になる可能性があり、悪影響となります。
今まで400頭くらいの子犬育てに携わってきましたが、
いわゆる問題行動の要因に「わがままに育った」ことが挙げられます。
つまり、問題行動の原因は、犬を甘やかしてわがままに育てた人にある場合が多いのです。
例えば、
「『ご飯が欲しい!』と吠えるから与えておとなしくさせる。」というもの。
これは、人間の世界でいえば、「子供がスーパーのおやつコーナーで、『おやつを買って~(泣き)』と泣き叫ぶので、買って落ち着かせる。」という状況。
この子供がどう学習したかは明白で、次にスーパーに行ったときにどういった行動をとるかは想像ができますよね…。
同じく、「朝に散歩に行きたいとせがんで鳴くから連れ出してあげる。」
これによって、早朝に鳴き声を出す時間がどんどんと早くなり、「4時前に起こされて眠れない…」となってしまったケースもありました。
他にもよくあるのが、
「可愛そうだから…」、「〇〇させてあげたい…」、「犬に悪いから…」という気持ちで接してしまう場合。
可愛そう:「かわいそうだから待たせるのはよそう」「チャレンジはまだかわいそうよ」
させてあげたい:「いろいろな美味しものを食べさせてあげたい」「自由にさせてあげたい」
悪いから:「たくさん待たせてごめんねぇ~」
上記の例で注意しなければならないのは、「かわいそう」などと思っているのは犬ではなくて人であること。
犬の気持ちを考えているようで、実は自分の気持ちを満たしたいという状況です。
会社の中で言えば、好かれたくて(嫌われたくなくて)上司や部下にいい顔をしているパターンの人。
こんな人は、言動に一貫性がなく、自信がなく映り、結局は誰からも尊敬されないですよね…
また、植物でも水を与えすぎると根腐れしてうまく育たないものがあるように、
「可哀そうだから」、「犬に悪いから」とチャレンジさせずに何でも先回りをして手を施しすぎると、依存心やわがままを強くさせてしまう要因となっていきます。
何歳まで甘える?
オオカミは、子供のころには犬と同じく吠えたり兄弟間でよく遊びますが、大人になるとほとんど吠えなくなり、犬ほどには遊ばなくなります(『犬が私たちをパートナーに選んだわけ』ジョン・ホーマンズ)。
でも、犬は、大人になっても吠えるし、よく遊び、甘えてきますよね。
これは、ネオテニー(幼形成熟)といって、大人になっても見た目や行動に子供の要素が残って成熟しているためで、オオカミとは違う犬の特徴の一つです。
長い家畜化の過程で、人に従順で可愛がられる個体を選択繁殖してきた結果によるものなのでしょう。
したがって、犬は年齢を重ねても甘えてくるのが普通であり、「甘えさせるのは何歳まで」と考える必要もありません。
まとめ
甘えさせるとは、気持ちの面での要求に応えてあげること。抱っこしてほしい、撫でてほしいというという気持ちを受け止めて、スキンシップすることで、子供や犬がが精神的に満たされるもの。
甘やかしとは、物理的な要求に応えてあげること。または、人・親の都合で、本当はできるのにチャレンジさせないこと、犬・子供の要求を考えているようで人・親の要求を満たそうとする行為です。
まとめを読んでも、「何が甘えで何が甘やかしなのか?」という境界線がまだぼんやりに感じる方もいるかもしれません(文章表現が難しい…)。
"甘えさせる―甘やかし”の行動の境界線ははっきりと付けられるものではなく、それぞれ違うというのが結論です。
犬の性格によってどこまでが甘えで甘やかしになるのかの境界線は変わるでしょうし、人の都合によってもどこまで甘えさせられるのかの境界線は変化しますよね。
結輪!
『尊敬して居ればこそ、安心して甘えるのだ。』 (太宰治 『女の決闘』より)
この一言に尽きます。。。。
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