組織を作って共同生活を円滑に送っていく上で、よりよいコミュニケーションが必要なのは言うまでもないでしょう。
コミュニケーションは大きく分けると❝ 聴くこと ❞ と ❝ 伝えること ❞ で成り立っています。
今回はそのうちの ❝ 伝えること ❞ に注目して、犬に伝える上でどの犬にも共通してもっとも大切なことという定義で考えてみました。
伝える上で最も大切なこと
よりよい伝え方の話になると、まず議論になりやすいのが、『褒めて伝える』か『叱って伝えるのか』というもの。
しかし、相手の性格によっては、褒めて喜ぶ場合もあれば、褒めると逆効果になる場合もあります。
また、叱ったとしても、誰から叱られたのかが重要ではないでしょうか。
このように、褒めるや叱るは、相手の性格や伝える人、状況によって、受け取り方は変わります(犬育てがうまい人の特徴~基準を上げる~ 参照)。
つまり、伝える上で褒めるか叱るかの議論はどの犬にも共通して最も大切なこととは言えません。
他にも、褒めるときや叱るときの言葉に込められた気持ちが大切という主張もよく耳にします。
犬がいうことをきいてくれない状況になると、「私は舐められているんですね」と言われる方が多いのですが、まさに伝える時の気持ちが大切というところを原因に考えてのことでしょう。
しかし、これもどの程度感情を込めるのが効果的なのかは相手によって変わり、一概に言えるものではありません。
ということで結論ですが、
犬に伝える上でどの犬にも共通して最も大切なのは『タイミング』です。
褒める時にどんなに愛情表現を豊富にしても、叱るときにどんなに威厳を示しても、タイミングを間違えると犬は全く理解できていない可能性があります。
マインドフルネスな犬
なぜタイミングが大切なのか、犬の習性から考えていくことができます。
犬は今を生きている動物です。
人は言葉をつかえるので、過去について記録したり、将来について計画を立てるなど、今だけではなく過去や将来のことも考えることができます。
人間のような言語を持たない犬は、あくまでも今この瞬間について意識を向けて生きています。
今ここに集中するということで、集中力の向上やストレスの軽減など良い効果をもたらすマインドフルネスが注目を集めていますが、犬は常にマインドフルネスの状態で生きていると言えるでしょう。
犬は、人間のように過去の出来事にとらわれていつまでも後悔することはありませんし、未来を悲観して不安に感じることもありません。
常に今の瞬間に意識を向けて、今が大切なので、毎朝大喜びで「おはよう!」の挨拶をしてくれて、そんな犬の行動に人は癒されるんですよね。
即時フィードバックが効果的
今ここの時間軸で生きている犬に対して、こちらの意図を伝えるためには、今ここで伝える必要があります。
つまり、即時フィードバックが最も大切なこと。
起こった結果の直後にフィードバックしてあげないと、何に対してのフィードバックであったのかは結びつきません。
では、どれくらい即時に伝える必要があるかというと、1秒以内が目標です!
2~3秒経過してから褒めても叱っても、ほとんど伝わりませんので、それであればフィードバックをしない方がまし。
こう書くと、
必ず反論があるのが『帰ってきていたずらしていたら反省した目をしている。わかってていたずらしているから叱ったほうが良い。』というもの。
他にも、『室内で排泄の失敗をした後は反省した態度をとっている。何かの腹いせで失敗しているんだ。』というのもあります。
まず、犬はイタズラや排泄の失敗をした後で叱られても、どうして叱られたのかはわかっていません。
ではどうして、あの反省した(ような)態度をとっているのかというと、同じ状況で飼い主に叱られたことを記憶しているから。
わかりやすいように犬の気持ちを代弁してみると、
「以前、同じ状況でなんかよくわからないけど飼い主が不機嫌になった…。また不機嫌にならないか心配だなぁ…」です。
『いたずらするのは良くないこと!いたずらはダメ!』『そそうするのはダメ!』と伝えたい飼い主の気持ちは全くわかっていないでしょう。
その証拠に、また同じことを繰り返しているはずです…。
伝え方を見直してみる
犬とコミュニケーションをしていくには、即時のフィードバックが必要です(大切なことなので何度も言います!)。
ということは、だらだらと伝えるのも効果的とは言えません。
褒めたら喜んでほしくて、「よ~し、よしよしよし!」と褒めてしまいがちですが、長い時間褒めていると何に対して褒められているのかがぼやけてしまいます。
それよりは、行動の直後に一言でスパッと伝えてあげた方が伝わるでしょう(叱るのも同じです)。
タイミングは作るもの
犬に伝える上で最も大切なことはタイミングであることが、ご理解いただけましたでしょうか?
効果的なフィードバックは1秒以内が鉄則です(しつこくてすみません)。
ということは、犬がどんな行動をするのか予想しないまま、出たとこ勝負で反応しているとほとんど間に合いません。
では常に犬の動きに意識を集中しているのかというと、それも難しいですよね。
したがって、何か教えたいときにはタイミングを作ってあげるとよいでしょう。
❝ タイミングを作る ❞とは、伝えたい場面を能動的に作ってあげることで、犬の動きを想定するということ。
例えば、先のお留守番の例で考えてみましょう。
お留守番中にいたずらをしないで落ち着いて待っていることがゴールなら、まずはお留守番の時間を短くして、お留守番中に落ち着いて待てている状況を作って認めていくことで解決したことがあります。
拾い食いや飛びつき、吠えなども同じことで、ゴール(理想)の場面を能動的に作ってあげると良いでしょう!
犬に伝えるのは、
「今でしょ!」林 修(予備校講師、タレント)
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