犬や子供に対して、怒ってしつけること、罰を与えることのマイナス面はこのブログでも書いてきました(『それでもあなたは罰を与えますか?Part1 & Part2』参照)。
すると、厳しくしてはダメだと勘違いして、褒めることを中心に優しく接することに傾いてしまい、犬がわがままになっていくというパターンを目にすることもあります。
これは人間の子育てでも同じで、子供の教育でも個を尊重する、叱らない子育てなどの考え方が主流になるにつれて、じっとしていられない子や周りと協調できない子が増えて、学級運営(特に低学年)も大変になっているのだとか。
勘違いしてほしくないのは、『怒っちゃダメ』なのは、常に優しくすることではないんです。
むしろ、犬育てがうまい人は、しっかりと厳しいんです。きちんと犬に要求します。
こう書くと、「怒っちゃだめだけど厳しいってどういうこと?」と思われますよね。
以下で、詳しく説明します。
怒っちゃだめだけど厳しいってどういうこと?①
まず、ハウス(「ハウス」の指示でケージに入る)の例で、犬への付き合い方の違いを見てみましょう。
******<犬に優しすぎる対応>***********************
オーナー:ハウスと指示してもケージに入ってくれない…。うちの子はケージが嫌いみたいなんです。
私:ケージに入ることはあるんですか?
オーナー:日中は気が向いたらケージで寝ることもあります。ただ指示をすると逃げて入ろうとしてくれません。
私:ケージに入ってほしい時にはどうしています?
オーナー:おやつを使って誘導しています。でも、初めはドックフードで入ってくれていたのですが、今ではビスケットじゃないと入ってくれません。
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この話で、何が根本の課題になっているか気が付くでしょうか?
犬がハウスに入ることが嫌いで、いざという時に困るので、ハウスを教えたいという依頼でしたが、犬にハウスを教えることが課題ではありません。
オーナーの「ハウス」という指示を無視していること、つまりオーナーと犬との関係性の問題です。
案の定、この犬は、ハウスに限らず、吠えて要求したり、目を盗んでテーブルの上の物を取ったり、呼んでも来ないなど色々な場面でオーナーの指示を無視している場面が見受けられました。
怒っちゃだめだけど厳しいってどういうこと?②
一方で、良い関係性の場合(優しいだけではなく、しっかりとした厳しさも求めている方)の指示に対する犬の反応を添付の動画で参照してみてください。
ハウスと指示をしたときにはハウスに入るということが徹底されており、犬の気分ややる気などは関係ありません(動画でも犬が少しためらっていますが、指示をし直してハウスを求めているのがわかると思います)。
もちろん、ハウスに限らず、生活の色々な場面でしっかりとこちらの要求を伝えており、その要求内容も犬のためというよりも、「自分が楽だから」という基準だったりしています。
この関係性を別で表現すると、共同生活を送る上でのルールが守られていると言えます。
つまり、ここで言う ❝ しっかりと厳しい ❞ とは「ここまではいいけど、これ以上はダメね」というルールをはっきりと犬に示しているということです。
例えば、車の運転をするときも、赤信号は止まるというルールを皆が守っているという前提がしっかりとしているので、安心して運転できます。
「急いでいる場合は赤は無視してよい」とか、「車が来ていない場合は止まらない」といった個人の感情や判断に任せていると、怖くて運転できませんし、歩いて交差点を渡るのも怖いですよね。
犬と共同生活を送る上でも同じこと。
❝ ハウスという指示でハウスに入る ❞ということは、共同生活を送る上では❝ 赤信号で止まる ❞と同じレベルのルールであり、ハウスに入るかどうかは犬の気持ち次第…というグレーゾーンはありません。
犬の自己主張が強くなっている場合は、このルールがはっきりとしておらず、犬の気分に合わせすぎて、徐々に犬が主導権を持つようになっているパターンが多く見受けられます。
犬の考え方
犬は人間よりも白か黒かで物事を判断していると言っていいのではないでしょうか。
特に、人間が大切にしている公平や平等などの倫理観や同情心は持ち合わせていません。
それなのに、公平や平等、同情を犬との付き合いにも適応してしまうことで、犬にとってみると白か黒かはっきりと判断できない部分が出てきます。
「いつもハウスに入っていて可哀そうだから、今日はハウスに入らなくてもいいよ…」と同情されても、その人の気持ちは理解していないのです。
したがって、「ハウスと指示したら必ずハウスに入る」と求める人の方が、犬にとってわかりやすいんですね。
しかも、これは子犬のうちからはっきりとしていく必要があります。
「子犬のうちは好きにさせて、成犬になってからでいいんじゃない?」と思われるかもしれませんが、子犬といっても犬の思考法は同じであり、子犬のうちから求めていくことが大切。
400頭近くの犬育てに携わってきて観察していると、子犬は1週間くらいでその人との大まかな関係性を決めてしまっているなと感じます。
したがって、初めが肝心と言えます。
まとめ
最後に、今一度確認しますが、ここで言う❝ 厳しい ❞とは、犬を叱ったり、犬に体罰をふるったりという厳しさのことではありません。
しっかりと厳しい人がよく口にするのが、『絶対できるよ!』です。
先のハウスの例で言えば、
「気分じゃないと入ってくれない…」ではなく(下からの関係)、「ハウスしなさい!(怒)」でもなく(上からの関係)、
『あなたなら絶対できるよ!』という気持ちで、徐々にできるようにレベルアップを求めていくことになります。
犬を育てる関係の色々な本を読んだり、YouTubeで発信している内容を観ていても、犬を育てていく上で、具体的なやり方はたくさん載っていますが、どんなにやり方を覚えても、犬と向き合うマインドが間違っていると、全く意味がありません。
この記事とあわせて、犬育てのがうまい人の特徴~横の関係を作る~ / 犬育てがうまい人の特徴~基準を上げる~も読んでみていただき、このマインドが伝わると嬉しいです!
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