『任せたよ!』

盲導犬について

パピーウォーカーから聞いたお話

先日、パピーウォーカーの方から聞いたお話です。

奥様の用事で車で外出するので、パピーも一緒に連れていきました。

着いた先で奥様が用事を済ませている間、ご主人はパピーと散歩をして時間をつぶすことに。

ただ、その場所はあまり地理感覚のない場所。

しかも、その日は雪で視界も悪い状態。

そんな中で犬と散歩をしていると、どこを歩いているのかわからなくなってしまいました。

奥様に電話をするも、場所もうまく説明できません…。

雪も降っているせいか道を尋ねることができる人にも会えませんでした。

困ったご主人は、一緒に歩いている犬に「駐車場まで連れて帰って!」と、

犬に任せる決心をして、犬の歩くままに付いて歩きました。

当然、犬にとっても初めての場所。

「本当に大丈夫か…」と心配になりましたが、1時間くらい歩いていると、

見覚えのある場所に出てきたことに気が付き、無事に駐車場に帰ることができたということでした。

盲導犬ユーザーのお話

このお話をお聞きして、ある女性の盲導犬ユーザーのエピソードを思い出しました。

盲導犬ユーザーには盲導犬に誘導してもらいたいそれぞれの目的地までの練習をしていきますが、

それ以外に、毎日盲導犬と一緒に気軽に歩ける散歩コースも作っていきます。

たかが散歩と思われるかもしれませんが、

誰にも邪魔されずに誰の助けも借りずに散歩ができるなんて、

盲導犬を持つ前には考えられないこと。

その女性ユーザーも「こんな幸せな時間はない!」と、

毎朝、盲導犬と一緒に歩く1時間の散歩はかけがえのない時間となりました。

その日も盲導犬と一緒に朝の散歩をしていた時のこと。

途中から一気に雪が積もるほどの大雪となり、足元も悪くなってきました。

雪道は、足元も悪く、道の状況も刻々と変わりますので、

視覚障がい者が歩くうえではとても困難なものになることは想像がつくと思います。

その盲導犬ユーザーも、歩き慣れた自宅周辺の道でしたが、

自分がどこを歩いているのか全く分からなくなってしまいました。

盲導犬との歩きは、犬が引っ張って歩いているわけではありません。

ユーザーの頭の中にある地図に従って、ユーザーが方向の指示をしていきます。

盲導犬は歩いている道中にある障害物をよけたり、交差点を見つけて止まるのが仕事。

つまり、お互いにそれぞれの役割をもって協力しながら歩く共同作業です。

しかし、その盲導犬ユーザーはどこを歩いているかわからなくなり、

犬に指示を出すことができなくなってしまいました。

早朝の散歩で、周囲に助けを呼べる人の気配もありません。

そこで、ユーザーは覚悟を決めて、『あなたに任せるから家まで帰って!』と、

盲導犬にすべてを任せることにしました。

どれくらい歩いたのかはわからなかったといいます。

盲導犬が止まってしっぽを振っているので、どうしたのかと手を伸ばしてみたところ、

いつのまにか自宅の玄関の前に到着していました。

無事に到着できた安堵感と盲導犬への感謝で、

思わず抱きしめて「ありがとう!」と涙したということでした。

犬って素晴らしい!

この二つのエピソード。

犬が人の不安を感じ取って誘導したのかどうかは、正直わかりません。

もしかすると擬人化した考え方かもしれません。

でも、お互いの信頼関係が強くなっていくのは、

人間関係でも、人と犬との間でも同じだなと思います。

ああ、犬って素晴らしい!

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