前回は、お散歩の4つの目的(①体力的な満足②精神的な満足③社会化効果④トレーニング効果)のうち、『体力的な満足』についてみていきました。
そして、「体力や筋力をアップするためにはただ1時間歩くだけでは意味がない。」というのが前回の話のまとめでした。
今回は残りの3つの目的について考えていきますが、先に言うと、「やっぱりただ歩くだけではあまり効果的ではありませんよ」が結論になります(「じゃあどうしたらいいの?」はインターバル歩行のすゝめ④で紹介します)。
ということで、それぞれ見ていきましょう。
②精神的な満足効果
<自然を歩く効果>
人は歩くとアイデアが浮かびやすくなるとはよく言いますが、これは歩くことで脳が刺激され、かつリラックスすることが関係しているのだとか。
そして、自然の中での散策はその効果をより高めるということがわかっています。
❝人は❞と言いましたが、犬で行われた研究では、都市部を歩いたときと自然環境での散策とでは、ストレスの指標となるコルチゾール値に特に変化はなく、行動にも特別な差はなかったという結果が出ています。
今のところ、犬の散歩において都市部でも自然環境でも犬の気分に差はないという結果になっていますが、犬と散歩をしている人なら、やはり自然環境に近いほうが犬のテンションが上がって喜んでいるように感じませんか?
公園に行けばあきらかに興奮度が上がったり、嬉しそうに草の上でごろごろする犬もいますので、犬にとっても自然環境は気分転換になるということは、これからの研究で分かってくるのではと思っています。

<歩く時間>
歩く時間も大切。
人は朝日を浴びると様々な効果があり(幸せホルモンであるセロトニンの生成、免疫を高めるビタミンDの生成、朝の目覚めや睡眠の質の向上などなど)、メンタルヘルスが改善されるといわれています。
これは犬も同じで、薄明薄暮に活動量が高まる遺伝子を持つ犬にとって、朝は一番エネルギー量が高く気力が充実しているときであり、朝日を浴びながら歩くことは気分的にも満たされていきます。
<歩くスピード>
見逃しちゃいけないのが歩くスピード。
人の歩行スピードの研究では、遅く歩くとストレスの指標となるコルチゾール度が低下して、速く歩くとコルチゾール度が上がることがわかっています。
じゃあ、遅く歩けばいいのかというとそんな簡単な話ではありません。
ただ遅く歩くよりも、速く歩いて適度にコルチゾール度が上がった後に遅く歩いた方が、よりリラックスを感じる結果となったというのです。
これを読んだときに思い出したのが、『2分で眠れる』という米軍の睡眠導入法。
これも、深いリラックス状態を作るために、「体の一部に力を入れてから脱力する」ということを繰り返すという方法が紹介されていました。
ということで、精神的にリラックスを作るためには、ただ歩くよりも運動強度の高い歩行をした後にゆっくりと歩くようにしたほうが良いということになります。
結論!犬の精神的に良い影響をもたらす最強のお散歩方法は、
『朝日を浴びながら+緑のある場所を+やや早歩き(早歩きとゆっくりの繰り返し)』です。
③社会化効果として
犬の成長にとって大切なのが社会化(人を信頼する、人生活する環境に慣れる)です。
これまで400頭以上の犬の成長を見てきましたが、社会化は特別なことをする必要はなく、社会化期から毎日のお散歩をしっかりと繰り返していけば、人と暮らす上での社会化は問題なくされていきます。
ただし、より効果的に社会化を促すことを考えるのであれば、ただ1時間を漫然と歩くよりも効果的な方法がありますので以下でご紹介します。
<歩行回数>
まずは1日の歩行回数を増やしてあげるといいでしょう。
例えば、朝に1時間歩くよりも、1回20分のお散歩を朝と昼と夜に3回行う方が犬の経験値が高まります。
夜の暗がりという環境は犬の警戒心を高めるようで、実際に「夜歩くと家の前に貼ってある選挙用ポスターに吠える。日中は吠えないのに…」というご相談を受けたことがあります。他にも、日中は問題ないのに夜の車のヘッドライトにびっくりする、通行人に警戒心を示すという犬もいました。
このように、同じ場所を歩いていても、それぞれの時間帯で犬の感じ方は違うようで、回数を歩いた方が様々な経験ができるでしょう。
<コミュニケーションをとる>
また、犬に任せて1時間歩くよりも、人とコミュニケーションが取れている状態のほうが社会化にとっても良いでしょう。
人も犬も自分にとってメリットのある行動を選択します。
つまり、好きなものや興味のあることは繰り返そうとしますし、苦手なことや嫌いなことは避けた方がメリットになります。
犬自身で限界を決めて「自分が嫌なことには頑として拒否する」ようになると、必要な社会化ができなくなる可能性もあります。
こういったことを防ぐには人とコミュニケーションをとることが効果的。
そして、コミュニケーションとして推奨しているのがアイコンタクトです。
アイコンタクトをとることで怖いや苦手を克服することにも利用していけます。
④トレーニング効果として
お散歩は老化を防止する効果も示されていますが、そこにトレーニングの要素を入れることが脳を刺激するのでさらに効果的!
よくお散歩シーンで、犬は好き勝手に自分のペースで歩いていて、人も犬には視線を向けずにスマホを見ながら歩いているというシーンを見かけますが、そんな状態で1時間歩いてもトレーニング効果は全く期待できません。
トレーニング効果を求めるなら、だらだらと好き勝手に歩くのではなく、人の指示を聞きながら歩けるようにコンタクトを維持していくことが大切です。
「ほかの犬や人に出会う経験をしているのに、吠えたり突進したりするようになってきた…」というご相談もよく受けますが、これも犬任せにして歩いていることが原因の一つです。
普段から、適度にコンタクトを維持しながら、人の指示を聞くことを繰り返していくことで、ほかの犬に出会った際にも望ましい行動に導いてあげることができます。
まとめ
ここまで、お散歩の4つの目的を達成するうえで、「ただ必要な時間を歩くだけでは効果が低くてもったいない!」ということを述べてきました。
『じゃあどうするの?』について、私も取り組んでいるおすすめの歩行方法を次回のパート4で解説していきます。
ということで、今回はここまで~!
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