人はとにかく損をしたくない
人はついつい欠けていることに意識が向く動物です。
また、得をするよりも損を回避したいという気持ちが強く働くことも心理実験で証明されていますよね(プロスペクト理論)。
これは、「原始時代では、損(例えば毒物を食べるとか、猛獣に襲われたりとか)をすることは死に直結する深刻な問題であり、損を避けた方が生き残って子孫を残せることになる。だから、危険を回避することは遺伝子レベルで備わっているもの。」という説明をよく目にします。
この進化論的な理由が正しいかどうかの証明は難しいところですが、脳科学の観点からは、『人はネガティブに引っ張られる』は証明済み。
損をしたときに強く活性化される脳の部位(特に偏桃体)は、利益を経験した時に活性化する部位よりも強く反応して、ネガティブな感情は喜びの感情よりも、長く続く傾向があることがわかっています。
(そういえば、1年前にあった「あいつ許せない!」という出来事を急に思い出しました…)
『ない』を証明するのは難しい!
このように、損をしたくないという心理から、人は相手の欠点をつつきたくなります。
正しいことを認めるよりも、「間違い」を指摘する方が多くなっていきます。
でも、「間違い(ない)」を証明するのはすごく難しいこと。
なぜなら、行動のパターンは無限にあり、間違うパターンも無限に生まれてくるから。
一方で、『正しい(ある)』はただ一つあれば証明できます。
「ない」を証明するよりも、『ある』の証明の方が簡単なんです。
「ん?どういうこと?」と思われている方もいそうですので、例を挙げてみます。
トイレの失敗をなくしたい…
飼い犬のお悩み相談でよくある❝トイレの問題❞。
室内でトイレを失敗してほしくないので、間違った場所で失敗するたびに「ノー!」と叱っていくとします。
でも、その場所で失敗したことを叱っても、排泄ができる場所はまだまだたくさんあり、それを叱り続けなくてはいけません。
しかも失敗をフィードバックしたければタイミングよく(2秒以内!)伝えないと意味がないので、失敗を指摘しようと思うと、ずっと愛犬の行動を見張っていなくてはいけません。
犬にしてみると、排泄をすると叱られるので、「飼い主が見ていないときにしよう」と学習してしまい、ますます間違いを指摘するのが難しくなっていきます…
そこで、『正しいこと(ある)』に目を向けてみます。
排泄場所はたった一つです。
褒めるのは、一つの正しい場所で排泄をしてくれたことをほめればいい!
どちらを教えるのが簡単なのかは一目瞭然ではないでしょうか!
『ある』に注目すればみんなハッピー!
この、『❝ある❞を見ていく方が簡単だよ!』はいろいろなことに応用していける考え方。
例えば親子関係や組織における人間関係でも同じです。
親はついつい子供の「ない」に注目してしまい、間違いを正そうとしてしまいがち。
他の子どもと比較して自分の子どもの「できない」部分が気になってしょうがないんですね。
組織においても、「最近の若いもんは…」と愚痴っている管理職は、部下の「ない」に注目しています。
こうして、相手の欠点(ない)に注目して正そうと、ガミガミ、グチグチと言えば言うほどに人間関係は破壊されていき、まったく聞いてくれなくなっていきます。
人生でも同じこと。
自分がいま「もっていない」ことを埋めれば幸せになると意識すると、「あれもない」「これもない」といつまでたっても幸せを感じることは難しいでしょう。
今の自分(『ある』)に幸せを感じているからこそ、もっと幸せが膨らんでいくのではないでしょうか。
『ある』しか見えない眼鏡があったら、どんなに世界が平和か…。
はっ!?
いかんいかん、自然と「ない」に注目していた(汗)
このように、ついついネガティブに引っ張られるのは脳科学上どうしようもないこと。
だからこそ、「❝ある❞に注目していこう!」と常に意識していくことが大切ですね!
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