これまで400頭近くの犬の成長に携わってきて、「犬を育てるのがうまいなぁ」と思わず感心する方々がおりますが、そういった方はいったいどう付き合っているのでしょうか?何を教えているのでしょうか?
今回見つけたポイントは、アイコンタクトを作っていることです。
犬の習性や特徴も含めて、アイコンタクトの大切さを考えてみました。
犬ほど人の顔を見る動物はいない
地球上の生物の中で、犬ほど人の顔をよく見てその感情を読むことに長けている動物はいないでしょう。
実際に、犬は人の顔の表情をよく見て、その表情をよく読み取っており、特に人が無表情や不機嫌な表情をした時にはストレス行動を多く示すようになるという研究結果があります(Cavalliら、2023 『Learning & Behavior』より)。
そして、人の顔の中で、どこを見ているのかという別の研究においては、人の目を見る時間が長いことがわかっています(フィンランド ヘルシンキ大学、2016)。
ちなみに、犬の祖先であるオオカミは、人の目を見ようとすることはありません。
つまり、犬は人との共生関係においてアイコンタクトという行動とるようになっていったことになります。
アイコンタクトの効用
このように人の顔をよく見る性質を持つ犬の特徴を利用しない手はありません!
では、なぜアイコンタクトが良い効果を及ぼすのか、その理由はたくさんあるでしょうが、代表的なものを3つ挙げてみます。
①『見ているよ』という存在承認
人は見つめあうだけで愛情ホルモンのオキシトシンが放出されます。
目を合わせることがプラスなのは普段の生活で想像してみるとわかりやすいのではないでしょうか。
家族や組織の中で毎日行われている❝挨拶❞を思い出してみてください。
目を見ないで、言葉だけの挨拶と、相手の眼を見てする挨拶。
どちらが、気持ちを込めた挨拶になるかはすぐにわかりますよね。
このように、❝相手を見る❞ たったそれだけで相手の存在を承認し、愛情を伝えることができます。
そして、この効果は、人と犬の間でも同じなんです。
麻布大学で行われた研究で、人とアイコンタクトをとった犬のオキシトシン濃度が有意に高くなることが証明され、人と犬という異種間でも目を見てお互いに幸せを感じていることが明らかになっています(麻布大学、2015)。
②伝わりやすい
的にボールを当てる時には的をよく見ると命中率が高くなりますが、会話も同じ。
言葉を誰に届けたいのか、目線でその方向性をはっきりさせることができます。
聞く側も目を見られていることで受け止める意識が維持されます。
また、『目は口程に物を言う』という言葉もあるように、ただ単に耳に入ってくる情報よりも、目を見て伝えることで、言葉に込められた想いの強さを伝えることができるのではないでしょうか。
③不安の回避、強い興味の回避
何かに強い不安を示したとき。その対象物から目をそらせることで不安を高めすぎないように誘導してあげることができます。飼い主とのアイコンタクトはその手段の一つになるでしょう。
同じように、散歩中に落ちているものに強い興味を示して拾い食いをして困る場合がありますよね。
『その対象物を意識するな!』と伝えてもなかなか難しい…。
それよりはお散歩中にアイコンタクトをすることで、自然と地面に落ちているものへの意識を減らすことができます。
❝犬を育てるのがうまい人❞は、犬とのコミュニケーションが的確です。
的確なコミュニケーションをとる上で、アイコンタクトを大切にするのは当然でしょう。
アイコンタクトの注意点
アイコンタクトは、あくまでも関係ができた間柄でプラスの効果を発揮します。
ちょっと想像してみてください。
知らない人が目をじっと見てきたら怖くないですか・・・(汗)
『何見てるんだ!』と喧嘩になる可能性もありますよね。
これは犬も同じで、よく知らない人にじっと見つめられることは当然プレッシャーになります。
犬同士でも❝ 相手に落ち着いてほしいとき ❞、❝ そっとしておいてほしいとき ❞、❝ 相手を尊重したいとき ❞は目をそらすことで、相手に自分の気持ちを示しています。
したがって、犬との関係が十分ではない状況や犬が興奮している状況では犬の眼をじっと見ないことが正しい対応。
相手との関係ができてきたら、アイコンタクトを求めていくようにしましょう。
まとめ
具体的なアイコンタクトの作り方は、さまざまな方法があり、YouTubeなどでもその方法がたくさんアップされていますので参考にしてみてください。
想いを伝えるには相手を見ることが大切。
アイコンタクトは愛コンタクトです。
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