北海道盲導犬協会では毎年50頭ほどの子犬をパピーウォーカーの皆様に委託していきますが、成長して盲導犬になるのは10頭前後。約2割です。
パピーウォーカーの皆様からは、「まさかうちの子が盲導犬になるなんて!」という驚きの声(もちろんその逆もあります)を聞くとともに、「どこが良かったんですか?」と聞かれることがあります。
指標について
『失敗の本質』という本を最近読みました。
その中で、何を指標にするのかが大切ということを考えさせられました。
第2次世界大戦で負けた日本軍について❝戦略の差❞という点で考察すると、
日本軍は目の前の戦闘に勝利することを重視して、
どんどんと戦闘地域を広げていきました。
その結果、戦力が分散したり補給がままならなくなって負けたという分析です。
一方で、アメリカは最後に勝利につながるシナリオを描き、
どの地域で勝つのが重要なのかを考えて、戦っていったというもの。
つまり、戦争の中で日本とアメリカには、指標をどこに置いていたのかに違いがあったと分析されています。
盲導犬を育成していてよく言われるのが、「すべてのパピーを訓練してみないとわからないじゃないか?」という意見。
確かにそれができれば理想ですが、
限られた資源を効果的に発揮していく上では、やはり評価をして可能性が高い犬を絞り込んでいくことも必要になります。
そこで大切になるのが、盲導犬として向いているかどうかの評価をする上で、何を指標にしているのかということ。
これについて、以下で言語化してみたいと思います。
盲導犬になる犬を見分ける指標
まず初めに、
今回示す指標のデータは、訓練に入ったかどうかの段階のデータであり、最終的に盲導犬になったかどうかではありません。
また、あくまでも❝性格❞の部分に絞った指標です。
訓練をした上で盲導犬にするかどうかは、性格的なもの以外にも健康上の問題などさらに複雑な指標を参考に決定していきます。
その上で、盲導犬の可能性を考える上で最も重要な性格的指標は『素直さ』です。
素直なタイプの犬は、訓練に対しての反応もよく、色々な環境や人に合わせる柔軟性を持ち合わせている犬が多いです。
実際に、2023年度に委託した51頭のパピーのうち、素直さが高く評価されたパピーの71%が評価を合致しています。
一方で利己的さが高く評価された犬で合致したのは23%
利己性が高いと評価されたパピーは、ほとんどがキャリアチェンジになっていることになります。
なお、頑固でマイペースな性格が悪いというわけではありません。
そういった犬も訓練を受け入れて、人とうまくマッチングしていけば、
盲導犬として力を発揮することもあります。
ただ、素直な犬が盲導犬として選ばれやすいということは事実でしょう。
ビジネスで例えれば、「頑固で人間関係には難があるけどこれだけは得意というスペシャリスト」よりも、『色々な人とうまく調整して様々な仕事をそつなくこなすジェネラリスト』を求めているということになりますね。
素直さを示す行動
では『素直』という性格的なことをどうやって評価しているのでしょうか?
相手が素直かどうかは人によっても捉え方が違い、それぞれの感覚に任せていると評価の正確性が保てません。
したがって、『素直さ』を行動で捉えていくことが大切になります。
では、『素直さ』をどの行動で捉えるかというと、
一番重要にしているのは❝名前を呼んだら反応する❞です。
例えば他の犬や臭いに気を取られていても名前を呼んだら気持ちが切り替わるかどうか、
人に名前を呼ばれて褒められることを喜びと感じるかどうかを見ていきます。
まとめ
❝素直さが重要❞というのは、あくまでも『盲導犬』というものを考えた時の指標です。
決して自己主張の強い犬、マイペースな犬がダメと言っているわけではありません。
「頑固でクセが強い性格の方が可愛い!」と感じる人もいるでしょうし、盲導犬としてはキャリアチェンジでも家庭犬としては最高のパートナーになっていますので!
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