ハーネスをつけたら顔つきが変わる?

盲導犬について

盲導犬についてよく言われるのが、

『犬はハーネスをつけると顔が変わって仕事モードになる!』

というもの。

皆さんも耳にしたことがないでしょうか?

別に、トレーナー側(盲導犬協会が)がそう言っているわけではないのですが、

トレーナー側も盲導犬の啓発をするときにはこの話を利用させてもらっています。

世間的には、「盲導犬はストレスがたまる」「早死にする」なんて言う認識がまだまだ根強いので(早死にするなんてもちろん嘘ですよ)、『真剣モードはハーネスをつけているときだけですよ。ハーネスを外しているときは普通の犬と同じで、生活にメリハリをつけています!』とかなんとか…(ものは言いよう)。

今回は、

『盲導犬はハーネスをつけたら本当に真剣モードなのか?』を考察してみます。

散歩中の○○に変化あり!

今、キャリアチェンジ犬のデミタスを私の自宅で短期飼育中です。

(アイキャッチ画像の子です)

しばらく預かる予定なので、「どうせだったら盲導犬の訓練をしていこう」と考え、

ハーネスをつけて盲導犬のタスクを教えながら歩くときもあります。

今回はデミタスの様子からの考察です。

まず、リードだけで散歩をしているときと、ハーネスをつけているときに何か違いがあるかどうかを私の感覚ではなく、明らかに測定できるものはないかという視点で観察してみました。

すると明らかに、

❝散歩中の排尿回数❞に変化があることがわかりました。

リードだけで散歩をしているときは(普通の散歩)、40分の歩きの中で平均4.5回の「排尿回数がありました(デミタスは1歳10ヶ月で去勢をしたため、マーキング行動があり、排尿回数がやや多めです)。

一方で、ハーネスをつけて訓練をしながら歩いているときは平均0.6回!

※同じコースではありません/約40分の散歩と訓練を3回ずつ実施した比較です/歩行スピードなどは同じです

ハーネスをつけているときの方が排尿回数が少ないことが明らかです。

真剣モードだから?

では、なぜ排泄回数が減っているのかについてですが、

『やっぱり真剣モードだから』と結論付けるなら、

何かしら緊張感のサインがボディーランゲージとして示されているはずです。

ここからは、私の感覚がどうしても入ってきてしまいますが、できるだけ客観的な視点でボディーランゲージを観察した結果から言うと、

ハーネスをつけているときに緊張を示すボディーランゲージを示す・多くなるということはありませんでした。

(アイキャッチ画像の表情も❝真剣モード❞というよりも❝リラックス❞に見えません?)

そもそも、盲導犬の作業を教える訓練は、

完全に報酬ベースの正の強化による訓練を採用しています。

ちなみに、他犬を発見したときに向かっていく、吠えるといった行動がありましたので、

これについては『ノー』の指示で行動を止めることを教えましたが、普通の散歩のときも同じ対応をしています。

犬の眠りに関して、❝ストレスを受けた後の方が眠りに入るのは早いが、眠りは浅い❞という研究結果がありますが、散歩や訓練の後でデミタスの眠りに何か違いがあるかと言われても特別な変化は確認できません。

ということで、

『ハーネスをつけて真剣モードになっているから排尿を我慢して歩いている』と結論付けるのは無理がありそうです。

原因らしきもの

デミタスの緊張感に変化がないなら、なぜ排泄回数が減っているのでしょう?

何かはっきりとした違いがあるとしたら、私(人)の方の変化です。

ハーネスをつけているかどうかによって、デミタスに声をかけて褒めたり、体を触って愛撫したり、報酬を与えたりという回数が明らかに違うことに気が付きました。

ハーネスをつけているときには、交差点で止まる、障害物をよける、正しい場所に誘導するなどなど、常に盲導犬のタスクが出てきますので、その都度声をかけて褒めたり、体を愛撫したり、トリーツを与えたりして、普通の散歩のときと比較すると3倍はリアクションしていると思います。

特に、タスクをこなしてくれた時には『ありがとう!』と声をかけることが多く、

普通の散歩のときにはまず使わない声かけですよね。

結論

今回のまとめとして、

ハーネスをつけることで顔が真剣モードに変わったのは、

デミタスではなく私の方だったというのが結論です。

私がデミタスに集中していることで、デミタスも私とのコミュニケーションに集中して、排泄回数が減っていたのでしょう。

実際に、数々の研究で、

犬は飼い主の感情の違いを感じて態度を変化させることがわかっています。

この結論に至った時、

デミタスはちゃんと反応してくれていることを改めて実感できて、

ますますデミタスが愛おしい気持ちになりました。

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