今回は体力面を満たすお散歩について考えてみましょう。
ここで言う「体力面で満たす」というのは、『歩行によって体力が向上する』と定義して考えていきます。
また、あくまでも盲導犬協会で繁殖されているラブラドールについての話であるということを前置きしておきます。
詳しくは、またの機会にまとめてアップしたいと思いますが、ラブラドールレトリーバーの中にも系統があり、盲導犬協会で繁殖している系統はとてもおとなしく落ち着いている系統です。
当然、アグレッシブに動く身体能力の高いタイプのラブラドールもいて、そういう子を飼育する場合は、『最低1日1時間』はまったく当てはまりませんのであしからず。
ただ歩くだけでは意味がない
では、1日1時間歩けば体力面が向上していくのかというと、ほとんど意味がありません。
実際に、1時間歩いているパピーが避妊手術をするときに、「内臓脂肪がついている」と獣医師から指摘を受けたことがあります。
また、まだ1歳なのに老犬のように後ろ脚を引きずって歩いて、後ろ脚の爪の上部が削れているパピーも見かけます。
人でいえばタラタラと歩いている状況で、心肺機能や筋力アップには全く効果がありません。
人の歩行で考えてみる
人の歩くことと体力向上についても同じことが言えるので、ご紹介します。
歩くことは確かに健康にいいことはあらゆる研究で示されています。
健康のために❝1日8000~1万歩が目安❞とよく言われますよね。これは世界的にも同じ歩数を目安にしているようで、皆さんの中にも目標数値にしている人がいるのではないでしょうか。
しかし、ちょっとショッキングな結果をお伝えしますが、1万歩を1年間続けた人の体力を測定したところ、体力向上には効果を示していなかったことがわかっています。
加齢による筋力の低下を抑えることができなくて、1万歩歩いていてもしっかりと筋力は低下していたのだとか(ショック!)。
ただ1万歩歩くだけでは運動強度が低すぎるので体力や筋力の向上の効果は低いのだそうです。
体力が向上するための運動強度とは、最高酸素消費量の60~70%程度の強度が必要で、ややきついと感じる運動。
具体的に言うと、急ぎ足で歩いて目的地に到着したら息が少し上がって、じとっと汗が出てくるくらいの強度です。
これを1日30分、週に3~4日の頻度で、3~4ヶ月継続すると、心機能が向上して筋力が上がり、加齢に負けず体力が向上したという結果となりました(10歳若返ったと同じくらいの向上も見込まれるそうです!)。
また、生活習慣病指標(高血圧症、高血糖症、肥満症、糖尿病)についても改善がみられ、この強度で歩くことが、文字通り健康にもつながることになりました。
ちなみに、上記の強度で歩きながら、「8000歩歩く群」と「1万歩歩く群」を比較してみたところ、体力向上効果に大きな変化はみられなかったようで、強度を維持していれば8000歩でOKということになります。
歩くことで体力や健康の向上を目指すなら、重要なのは歩数や時間ではなく、その質(運動強度)を考える必要があるということです。
改めて犬の体力アップを考える
上記の人の体力アップにつながった結果は犬に対しても同じことが言えます。
1時間普通のペースで歩いても犬の体力の向上にはつながりません。
よく、歩いてダイエットを目指す人がいますが、ダイエットを目指すならなおさら、普通に歩いているだけでは、何時間歩いてもダイエット効果につながらないことがわかるでしょう。
つまり犬の体力の向上を目指すには、犬にとってもややきついという運動強度が必要ということです。
今回はここまで!
参照 『ウォーキングの化学』 能勢 博

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